すききらい

主に連ドラたまに映画の感想(好き嫌い)を語るブログ。

凪のお暇 3話 感想

とにかく自分が自分を生きられない。自分らしく生きたいとか、ナチュラルに生きたいとか、そういう次元じゃなくて、もっと根本的に“自分を持つこと”自体を許されずに生きてきた人達が“自分を取り戻す”ドラマだこれは。ほんわかな劇伴と温かい交流みたいなものにごまかされているけれど、実はめちゃめちゃしんどい部分に切り込んでいるよなあ。

物理的な距離は離れているのにハガキ1枚で途端に母親の支配下におかれる凪(黒木華)。ちゃんとしなさいという母親の呪いにいつまでも囚われ続ける凪を描きつつ、より悲惨さを感じさせるのは慎二(高橋一生)の家庭環境だ。親戚の結婚式の一幕に思わずぞっとしてしまうほどの冷ややかな家族がそこにある。いつから慎二は仲の良い幸せな家族を演じてきたんだろうと、いつからこの終わりきった家族を取り繕う役目を負わされたんだろうと、思いを巡らせずにはいられない。これが凪の、慎二の、ルーツなんだ。

さて凪はゴン(中村倫也)に引き続き距離感のおかしい坂本さん(市川実日子)と交流を深める。ぐいぐい来る坂本さんに連れられ婚活パーティーに無理矢理参加させられた凪だがなんとモテモテである。偶然同じパーティーに参加していた元同僚の足立さん(瀧内公美)にそんな姿が見つかってしまい、なぜだかまたディスられる凪。会社にいるときは凪がサンドバッグになって終わりだったが、母親とのタイトルマッチを控えた凪はもう黙って笑ってはいないのだ。痛烈な反撃をかます凪!足立さん完敗で何も言えずに立ち去る!やったぜ凪!痛快だぜ凪!…とはならないのがこのドラマの味よな。足立さんに言ったこと全部自分に返ってくるというオチ。あさましいのは自分も同じだと気付く凪。

「元カレさんの、どこが好きだったんですか?」

咄嗟に答えられなかった坂本さんの質問の答えを伝えに向かった先は慎二の(そして凪の元)会社。はっきりと別れを伝えにきた凪の気持ちも理解したいが、わざわざ会社まで会いに来てくれたと嬉しくてたまらない慎二の気持ちを考えると残酷だなあ凪と思ってもしまうね。同僚達の前で思わず凪の手を取る慎二。その先の展開が見てられないくらいに辛い。この期に及んでも素直になれない慎二の闇の深さったら…。

すっきりと別れを告げた凪はいつも自分を前向きにしてくれるゴンの元へと。人種隔たりリバーを超えて。

次回はメンヘラ製造機のゴンを巡って凪と慎二がどう動くのか。めちゃくちゃ面白いぞこのドラマ。群れからはぐれた鰯に頑張れすぐ仲間の元へ帰れるよと応援する凪と、いいぞいいぞもっと離れろと応援する慎二。この2人のそれぞれの行き着く先がどこなのか、今からそれが楽しみで仕方ない。