すききらい

主に連ドラたまに映画の感想(好き嫌い)を語るブログ。

河瀨直美「朝が来る」

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直木賞本屋大賞受賞作家・辻村深月のヒューマンミステリー小説を、「あん」「光」の河瀬直美監督のメガホンで映画化。栗原清和と佐都子の夫婦は一度は子どもを持つことを諦めるが、特別養子縁組により男の子を迎え入れる。朝斗と名付けられた男の子との幸せな生活がスタートしてから6年後、朝斗の産みの母親「片倉ひかり」を名乗る女性から「子どもを返してほしいんです。それが駄目ならお金をください」という電話が突然かかってくる。当時14歳で出産した子を、清和と佐都子のもとへ養子に出すことになったひかりは、生まれた子どもへの手紙を佐都子に託す、心やさしい少女だった。しかし、訪ねて来たその若い女からは、6年前のひかりの面影をまったく感じることができず……。(映画.comより)

2020年 出演 永作博美井浦新蒔田彩珠浅田美代子

 

恥ずかしながら、河瀨直美作品を鑑賞したのは本作が初だ。

何なら私が河瀨監督を知ったのは2017年テレ東深夜枠でやっていたドラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』っていう、ちょっとふざけた作品の中で。

 

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 山田孝之がプロデューサーとして芦田愛菜を主演にカンヌ映画祭に出品するための映画を制作する過程を毎週追っていくっていう一見ドキュメンタリーなんだけれど、実はドキュメンタリーに見せた相当にシュールな方向にふざけたドラマっていう、何とも言えない作品であって。芦田愛菜以外にも長澤まさみ村上淳なども出演していたり、その作品の監督は山下敦弘だったりと何かと豪華だし。

そんな作品内で山田孝之に相談を受けるのが河瀨直美で(そもそも山田孝之が制作しようとする映画のタイトルが「穢の森」っていうんだけど、これは河瀨直美がカンヌでグランプリを取った「殯の森」をパロっているというのを後で知った)、どういう流れだったのかはあまり覚えていないけれど突然河瀨直美が監督して山田孝之を演者にショートフィルムを撮るっていう流れになったんだけれどね。その時の河瀨直美の山田孝之に対するアプローチの仕方とか、それを受けた後の山田孝之のお芝居が、ものすごい印象的で、それで河瀨直美という監督がすごく記憶に残ったのだ。

その後よく映画を観るようになって、もちろん河瀨直美という監督が日本を代表する映画監督の一人だってことも知って、「あん」や「光」なども録画はしていたけれど他にもたくさんある録画の山に埋もれて観てはいなくて、という時に最新作「朝が来る」が公開になってね。

おっ劇場で”初”河瀨直美を体験するチャンスだぞといそいそと観に行ったわけですよ。

そしてうきうきして観た感想は。

 

「退屈はしなかったけれど、映画としての感動は薄い。そして色々長い!」

 

 

この感じは河瀨直美の作風なのか、本作の狙いなのかは分からないが、

終始ドキュメンタリータッチの映画であった。

永作博美井浦新が紆余曲折あって特別養子縁組で生まれたての男の子を迎え入れるんだけど、その子が6歳の時が今でね。

今パートで永作井浦夫婦の家に電話がかかってくるのだ。

「私の産んだ子返してちょ。それかお金ちょうだいな。じゃないと養子だってご近所中に言いふらしてやるー!」と。

びっくりしながらもとにかくちゃんとお話しましょと家に来てもらったら、あれれ?となって。

ザ・不良みたいな格好で現れたその若い女性(観客からは後ろ姿しか見えず顔がはっきり映らない)は、永作と井浦が知る産みの親とは似ても似つかずで。

「あなた別人やん。私達は産んでくれたお母さんに会ったことあるんだよーん。あの時の産まれたての赤ちゃんに手紙まで渡してくれた優しい女の子とあなたは全然違うやい。それに養子だってことはもう子供本人にも伝えてるやい。近所もすでに知ってるわい。」

 

なんて言って、その女性はすいませんでしたとスタコラサッサと帰る。

 

さて、その女性は一体何者なのか。

 

子供の産みの母親は蒔田彩珠演じる産んだ当時14歳の中学生で、永作井浦夫婦と蒔田彩珠のそれぞれの過去を回想していきながら、その女性の謎に迫るっていうのが主な映画の流れで。

 

その回想がね、めちゃくちゃ丁寧。ドキュメンタリータッチで丁寧。

もちろんそのおかげで感情移入はするんだけれど

 

正直、丁寧過ぎて長いよ。

 

ひとつひとつのシーンが長過ぎて集中力を維持するのが大変。

俳優のお芝居はとっても素晴らしいし、だからこそ何とか集中力を切らさず観ていられるというのはある。あるけれどもよそれにしてもよ。

 

ミステリー要素も多分に入ってはいたけれど、途中で真相はだいたい予想が付くし、原作がそうなのかもしれないけれどなんだかくどい。

 

そこに加えて、人物の内面にフォーカスするためなのか

もうずーっとクローズアップ。

とにかくいつでもどんなときでもクローズアップ。

 

丁寧過ぎるくらい丁寧でなおかつずーっとクローズアップ。=おなかいっぱい。

 

ということで。

山田孝之で期待していた気持ちは、あまり満たされず。

エンドロールのある仕掛けも、感動した人もいるだろうが個人的にはあまり好みではなく。

 

しかし、物語の内容や結末は決して嫌いではなかった。

色々と考えさせられることも多く、観て良かったと思う内容だったよ。

 

 

すききらい度   すき☆☆

(好き満点が☆☆☆☆☆)