ビールを飲みながら

主に連ドラのこと、あと日々のこと、ビール片手に。

大恋愛〜僕を忘れる君と 9話 感想

この9話の展開の早さはもちろん作り手の意図で、ドラマの流れと尚(戸田恵梨香)の記憶の在りようが同じなのであろう。ダイジェストのように細切れのエピソードで連なる数年間。尚にとっては妊娠も母親の再婚も出産も育児もマイホームも、全てのことは記憶ではなく記録でしかないのだ。思い出として残ることは決してない。どんなに嬉しかったことも次の日には覚えていない。出産したとき、子供が立ち上がったとき、歩いたとき、初めて話した言葉…。思い出にはないけれどきっと尚はたくさんのたくさんのメモの中にそれを記録してきたんじゃないかって。そうして母親の愛情を何とか保っていたんじゃないかって。そんな風に思って、そしてそれを見続けてきた真司(ムロツヨシ)のことを思って、たまらない気持ちになる。

思い出だけじゃない。日常のこと、自分の身支度さえも出来なくなってしまう。序盤のシャツのボタンのかけ違いから、マイホームに引っ越した頃には髪をセットすることが出来なくなっていて、それから靴下や靴を履くことが出来なくなって…。虚ろな目でぼーっとしている尚には一体どのくらいの感情が残されているのだろうか。

真司も辛すぎる。辛すぎる日常で辛いとは言えない毎日を送ってきたんだろう。それでも尚と一緒にいたいと思いながらもどれだけの孤独を耐えてきたのか。どことなく憔悴しきったように見える真司の表情ひとつひとつにダイジェストの裏の真司の努力と苦労が見えるようだ。

そしてドラマの前半では2人を結び付ける役目を果たしていた〈小説〉という存在が、後半になるにつれてどんどん2人の苦悩の元として描かれていく。

「あの人は本物のあげまんだな」

「本物と偽物があるんすか?」

「何かで読んだけど 本物は自分を滅ぼしながら男を上げるんだってよ」

「自分滅ぼさないと本物じゃないんすか?」

「自分を滅ぼすくらいだから 押し上げるパワーも半端ないわけよ 世界に羽ばたいた天才の陰には必ずひっそりと滅んでいった女がいるらしいぜ」

まんま尚自身のことでしかないこの台詞の意味を正直図りあぐねている。尻切れトンボで続編を終わらせてしまった真司のこれからに関わる台詞なのだろうか。切っても切れない尚と真司と小説。“献身的に妻を支える夫”と“小説家としての業”を並んで描くことで何ともオリジナリティのあるドラマとなった本作だがもう来週で終わってしまう。

家を出て行った尚はどこへ向かったのだろうか。最終回どこにどんな風に落とし所をつけるのかとても興味がある。予告のビデオレターみたいなのでもう泣けて泣けて仕方ないような気がするが、とにかく来週を楽しみに待ちたい。