健康で文化的な最低限度の生活 8話
私もお酒が大好きだ。
一日中子供の世話して家事して、今日も頑張ったー!!って飲むビールの美味しさたるや。
だからきっと他人事じゃない。
いつタガが外れてしまうかなんて誰にも分からない。
今回はアルコール依存性のお話。
毎回毎回しんどい人生を送る人達と、それに必死に向き合う主人公達を描くこのドラマ。
展開は地味だしどうしてもトーンは暗めになってしまう。
そこを内場勝則、井浦新、田中圭で軽やかさやポップさを出して少しでも観やすくして、そうして大切なことをひっそりと伝えてくれる良いドラマだと思う。
毎回えみる(吉岡里帆)やえみるの同僚の視点を使って、一般的な目線(家族は絶対だ離れていても絆は消えないとか、アルコール依存性は本人のやる気次第で治るとか)から、少しずつ現実はそう簡単じゃないということを視聴者に示してくれる。
生活保護利用者の赤嶺(音尾琢真)は、家族が出来たことをきっかけにホストを辞め別の仕事を始めたが上手くいかず、妻に暴力を振るい、妻子がいなくなり、現在は孤独な日々を過ごしている。
15年妻子とは音信不通だ。
いつからかお酒に溺れてしまうようになり、ついに急性膵炎で緊急搬送されてしまう。
そしてそこから赤嶺の物語は動き出す。
赤嶺担当のえみるは最初、意志でお酒はやめられると思っていたんだろう、赤嶺との簡単な口約束を信じる。
赤嶺自身も簡単にやめられるともしかしたら思っていたのかもしれない。
すぐ現実を知る。
2回目の緊急搬送で、膵炎を治療しそのまま精神科へ繋げることに成功する。
やすやすと「アルコール依存性」と診断がつくが赤嶺は受け入れることは出来ない。
そりゃそうだろうなと思う。
これ以上自分の弱さを認めることなんて簡単に出来るわけない。
ギリギリだ今でギリギリ自分を保てる。
赤嶺の抵抗が私にはそんな風に見えた。
それでもなんとかアルコール依存性専門の病院に転院し3か月の治療プログラムを終える。
退院後、えみる達の協力で部屋を片付け、心機一転赤嶺は仕事を開始する。
選んだ職場は居酒屋。
俺大丈夫ですよ余裕ですよみたいな感じ、なんかリアルだなーと思う。
自助グループにも通ってしばらく頑張るけれど、お客さんに浴びせられたアルコールがきっかけで飲んでしまう。
自暴自棄になって家にも帰らない。
数日後、えみるは赤嶺を見付ける。
えみるは手を握る。
赤嶺さんを信じてると伝える。
人と人の繋がり、人の温もり、誰かが自分を信じてくれるということ。
孤独と絶望で今にも覆い尽くされそうな人にとっての、一筋の希望で救いだ。
他人の人生に一歩踏み込んで行動するということはとっても怖くて勇気がいることで、えみるはその一歩を踏み出すことが出来る人だ。
アルコール依存性は「飲んで死ぬか飲まずに生きるか」の二択。
赤嶺が自分の弱さを認め生きる決意をしたところでエンド。
先は長い、先は分からない。アルコール依存性の現実なんだと思うと胸が痛い。
話中えみると石橋(内場勝則)が話す場面がある。
石橋も若い頃アルコール依存性の利用者を担当したことがあった。
一緒に乗り越えようと頑張ったけれどその利用者は結局亡くなってしまった、それ以来利用者とは距離を置くようにしている。
石橋はアルコール依存性はそんなに簡単じゃない、それでもえみるに頑張って欲しいと石橋なりのエールを送ったんだろう。
実際の役所には、石橋みたいな人沢山いるんだろうなって思う。
心を尽くして疲弊して傷付いて、利用者と距離を置くしかない人達がきっと沢山いるんだろうな。
色々考えさせられるよ。
ほんと、視聴率は関係ないなと思う。